「道統正しく継承す錬心舘新時代へ」
「我に落日あれども、わが流儀に落日なし」。創始宗家の遺言とされるこの言葉は、先師没後18 年、
流派の継承を誓う一門至上の命題として、門下につどう全拳士の胸に、深く刻まれてきた。
この志尊の誓約が、今また、二代宗家の早すぎる死という悲しみを乗越え、一門の総意となって、
保勇三・三代宗家を 誕生させる大きな力となった。2月19 日、武学舎。式場正面の左右に飾られた
開祖宗家と二代宗家の大きな遺影が、これから始まる流派継承の式典を静かに見守る。
立ち会うのは清川和彦特別顧問と地元日置市の宮路高光市長。
まず参会者全員が起立し、昨年11月29日に逝去された二代目宗家に一分間の黙祷を捧げて、厳粛な式典が始まった。
推戴状授与――「保勇三殿少林寺流錬心舘全国師範の総意により、貴殿を道統少林寺流第三代宗家に推戴し、併せて十段範士号を授与する」。連盟会長 正木英雄範士が音吐朗々と推戴状を読み上げ、一門の新たな総帥となる保勇三師に手渡した。
これを了承する満場一致の拍手こそが、まさしく「一門の総意」。第三代宗家誕生の瞬間である。
新宗家となった保勇三師が開祖、二代目との思い出を交えながら簡潔に就任の決意を述べると、
武学舎は再び万雷の拍手に包まれた。初々しくも力強い、襲名の挨拶であった。
この後、一門の念願だった連盟の法人化が報告され、新しく設立された社団法人・全日本少林寺流空手道連盟の理事・役員が正面ひな壇に整列し、紹介を 受けた。
そして、二代宗家の遺命によ り新連盟の会長を務めることになった正木師範が、今回の制度改革と新連盟設立の意義を述べ、新たな体制で一門の負託に応え、錬心舘を発展させていく決意を語った。
「新連盟はスタートしたばかりで、課題は山積しております。たとえば審判技術の向上とか、各支部まちまちとなっている昇級審査の統一とか。こうした課 題に取り組んで流派の権威を確立しなければなりません。また事務処理の面でもIT化を進めて迅 速化をはかるなど、改善の余地があります。
宗家を補佐しつつ、理事役員の方々と連携を密にしながら、こうした課題を一つ一つ、解決していきたいと思います。 そして、皆さんが錬 心舘の空手をやっていて良かった、錬心舘に籍を置いて良かった、と心から思えるような組織にできたらな、と思っております。まだまだ思いばかりで、一歩を踏み出したばかりですが、皆様のご協力をお願いし、私の決意の言葉といたします。」
至誠一貫、その高潔な人格で一門の信頼を集める正木師範の言葉に、居並ぶ全国の師範たちも深くうなづき、熱い拍手で応えた。
この後、鹿児島市の城山観光ホテル(ロイヤルガーデン)に会場を移し、各界から三百名を超える参会者を集め、三代宗家・保勇三師の襲名披露懇親会が執り行われた。